Z世代のイベント参加実態と参加動機をデータで読み解く

はじめに

Z世代をターゲットにしたイベントが増える一方で、彼らが実際にどのような動機で足を運び、何に満足し、何に不満を感じているのかを把握しきれないまま企画を進めてしまうケースは少なくありません。参加動機を読み違えると、集客施策もコンテンツ設計も的外れになりかねません。

調査データを見ると、Z世代の過去2年以内のリアルイベント参加率は56.8%に達し、コスパ志向と非日常体験への渇望が共存している姿が浮かび上がります。本記事では、定義や消費傾向の整理から参加動機の分解、参加を阻むハードル、SNSとの連動、そして主催者が直面する設計判断まで、データをもとに読み解いていきます。



Z世代の定義と消費傾向


デジタルネイティブの行動特性

Z世代とは、1995年から2009年に生まれた世代を指します。幼少期からインターネットやスマートフォンなどのデジタル技術に囲まれて育った「デジタルネイティブ」であり、情報収集やコミュニケーション手段が従来の世代と大きく異なります。SNSや動画配信サービスを日常的に利用することが特徴です(参照*1)。

こうした環境で育ったZ世代は、テレビCMや紙媒体よりも、SNS上の口コミや短尺動画を通じて情報に接触する頻度が高い傾向にあります。Z世代が最も利用しているSNSはYouTubeで利用率86.1%、2位がLINEの85.8%、3位がInstagramの71.6%、4位がXの66.8%、5位がTikTokの52.8%です(参照*2)。

複数のプラットフォームを横断して情報を得るため、イベント主催者にとっては、どのSNSでどのような情報発信を行うかが集客の起点になります。発信チャネルを1つに絞ると、Z世代の目に触れる機会そのものを大きく取りこぼす可能性があります。


体験重視・コスパ志向の両立

Z世代の消費傾向を語るうえで欠かせないのが、コスパ志向と体験志向が同時に存在している点です。大学生を対象にした調査では、遊びに求める要素として最も多かったのは「コストパフォーマンス」で48.5%でした。一方で、「非日常(癒し・幻想)」が22.8%、「非日常(自然)」が12.9%と、非日常体験を求める声も合計35.6%に達しています(参照*3)。

別の調査でも、お出かけ先を選ぶ際に「コスパが良い」「タイパが良い」を重視する傾向が確認されています。加えて「期間限定やそこでしかできない特別感のある体験ができる」という要素も上位に入りました(参照*4)。

つまり「安ければ何でもいい」わけではなく、限られた時間と予算の中で満足度の高い体験を効率よく得たいという志向が読み取れます。イベント設計では、価格の安さだけでなく「ここでしか味わえない」という体験の密度を同時に訴求できるかが鍵になります。


イベント参加実態の全体像


リアルイベント参加率と参加ジャンル

Z世代のリアルイベント参加率は、多くの主催者が思っている以上に高い水準にあります。過去2年以内になんらかのリアルイベントに「参加したことがある」人は、Z世代では56.8%でした。ミレニアル世代でも48.2%と約半数が参加しており、若年層全体でリアルの場への関心が根強いことがわかります(参照*5)。

ジャンル別に見ると、Z世代・ミレニアル世代いずれも参加経験率が最も高かったのは音楽系イベントです。Z世代の音楽系イベント参加経験率は32.5%で、ミレニアル世代よりも9.4ポイント高くなっています(参照*5)。

音楽系イベントが突出している背景には、後述する「推し活」との密接な関係があります。ライブやコンサートが推し活の中心的な消費行動と位置づけられていることが、参加率の高さにつながっていると考えられます。主催者としてはまず、音楽系以外のジャンルでいかにリアル参加の動機を生み出すかが実務上の論点になります。


オンラインとオフラインの使い分け

Z世代はデジタルネイティブでありながら、リアルの場を明確に選んでいます。インターンシップ・仕事体験の開催形式を見ると、対面中心で参加した割合は39.1%にのぼり、前年の28.8%から10.3ポイント増加しました(参照*6)。仕事関連の領域においても、対面への回帰が数字として表れています。

一方で、情報収集の段階では依然としてオンラインが主役です。推し活の情報収集では全体の86%がSNSを活用しており、特にヘビー層ではXの利用率が95.5%に達します(参照*7)。

この傾向から見えるのは、「情報はオンラインで集め、体験はオフラインで得る」という使い分けです。主催者がオンライン配信だけに注力してしまうと、Z世代が本当に求めている「その場にいること」の価値を提供できなくなります。逆に、オフライン体験だけを充実させてもSNSでの事前情報が不足すれば認知すら広がりません。


参加動機を分解する


非日常・没入体験への渇望

Z世代のイベント参加動機を分解すると、最初に浮かび上がるのが「非日常体験」への強い欲求です。2023年に行われた共同調査では、Z世代には「デジタル化により他者といつでもどこでも繋がっている状態や日々のタスクに追われることからくる疲れから心理的に距離を置き、他者に気を遣うことなく自分らしくありたい」というニーズがあると分析されています(参照*8)。

大学生への調査でも、遊びに求める要素として「非日常(癒し・幻想)」と「非日常(自然)」を合わせると35.6%に達しました(参照*3)。常時接続の日常から離れるための手段として、イベントが選ばれていることが分かります。

さらに、Z世代はミレニアル世代と比較して「興奮&享楽」の欲望が特に高いことも明らかになっています(参照*5)。日常を忘れて没頭できる体験を設計できるかどうかが、Z世代の参加動機を捉えるうえでの第一の論点です。


推し活が生む遠征と消費行動

Z世代の参加動機を語る際に避けて通れないのが「推し活」です。推し活の実施率を見ると、1位が「ライブ・舞台・コンサート・試合への参加」で46.9%、2位が「推しのSNSや出演情報のチェック」で45.4%、3位が「推しに関する映像や書籍を見る」で44.0%となっており、ライブ参加が推し活の中心に位置しています(参照*9)。

推し活におけるお金の使い道では、惜しみなくお金を使っている活動として最も多かったのが「イベントに参加する」で40.9%でした。「公式グッズを買う」の17.4%、「CD・DVDを買う」の16.3%を大きく引き離しています(参照*7)。

遠征行動にも特徴があります。推し活遠征の主目的は「ライブ・コンサートへの参加」が全体の64.8%で最多です。また、「限定グッズの購入」が39.6%、「ファンミーティング・握手会・サイン会などのイベント参加」が24.6%と続きます。限定グッズはモノでありながら、「限定」と銘打たれるだけで遠征意欲を大きく押し上げる傾向がうかがえました(参照*10)。推し活が「イベント参加」と「移動」と「消費」を一体化させていることが、参加動機の強さを支えています。


限定性・特別感というトリガー

参加動機の3つ目の柱が、限定性と特別感です。お出かけ先を選ぶ際のポイントとして「期間限定やそこでしかできない特別感のある体験ができる」という要素が上位に挙がっており、「せっかく行くならその場所ならではの体験をしたい」というニーズが確認されています(参照*4)。

Z世代はミレニアル世代よりも「承認&優越」「つながり&共感」の欲望が全般的に高いことがデータで示されています(参照*5)。限定体験に参加した事実がSNS上での承認や共感獲得につながる流れも、参加動機を後押ししていると考えられます。

主催者にとっては、「限定」というラベルを付けるだけでは不十分で、実際にその場でしか得られない体験の中身を用意することが問われます。限定グッズの購入が遠征理由の39.6%を占めるデータが示すとおり、モノであっても「ここでしか手に入らない」文脈が動機に直結しています。


参加を阻むハードルと対策


コスト・タイパの壁

強い参加動機がある一方で、Z世代のイベント参加を阻むハードルも明確に存在します。まずコスト面について、推し活に使うお金は「月1,000円未満」が44.0%、時間は「週5時間未満」が63.1%と、多くの層が無理をしないスタイルを選んでいます(参照*7)。

イベント参加のハードルを探った別の調査では、参加したくない理由の最多が「翌日が仕事(平日開催)で夜が遅くなる」で26.4%でした。「自腹での支払い金額が高い」も22.4%で上位に入っています(参照*11)。

遠征に関しても、特に女性は「手頃な価格の宿泊施設の充実」「イベント終了時間と公共交通機関の接続改善」「公共交通機関の臨時便・増便」への要望が高く、移動・宿泊を経済的にも時間的にもできるだけ簡潔に済ませたい志向が強い傾向にあります(参照*10)。コストとタイパの両面で障壁を下げる工夫が、参加率を左右する実務上の分岐点になります。


心理的安全性と人間関係の負担

コストやタイパだけではなく、心理的な要因もZ世代のイベント参加を妨げます。イベントに参加したくない理由として「苦手な人や気を遣いすぎる相手が参加している」が22.4%で上位に入っています。一方で、参加したいと思う条件としては「自分が会いたい・話したい人が参加している」が24.4%に達しました(参照*11)。

また、参加したい条件の最多は「費用が会社負担(または無料)である」の24.6%、次いで「1時間半~2時間以内で必ず終了する(二次会がない)」の20.9%でした(参照*11)。

人間関係の負担を軽減し、時間の見通しを立てやすくすることがZ世代の心理的安全性を確保するうえで大きな意味を持ちます。主催者としては、終了時刻の明示、参加の自由度の担保、1人でも居心地よく過ごせる空間設計といった点が検討課題になります。


SNSとイベント参加の連動


情報収集から参加判断までの導線

Z世代のイベント参加動機を形成するうえで、SNSは情報収集の入口として欠かせない存在です。推し活の情報収集に関しては全体の86%がSNSを活用しています。ヘビー層ではXの利用率が95.5%と突出して高く、Instagram(77.3%)、YouTube(54.5%)、TikTok(45.5%)など複数のSNSを併用する傾向が見られました(参照*7)。

SNSごとに役割が異なる点も見逃せません。Z世代全体のSNS利用率はYouTubeが86.1%で最も高く、Instagramが71.6%、TikTokが52.8%です(参照*2)。推し活のヘビー層が速報性に優れたXを、一般層が視覚的なInstagramやYouTubeを使い分けているという構図が見えてきます。

主催者がどのSNSに情報を出すかで、届くターゲット層が変わります。ヘビー層を動かすにはXでのリアルタイム情報、ライト層の認知を広げるにはInstagramやTikTokでの映像訴求、というように導線を分けて設計する必要があります


拡散行動と体験共有の実態

Z世代の情報接触はSNSでの「受信」にとどまりません。自分が体験したことや購入した商品・サービスを積極的にSNSでシェアする行動が見られます。InstagramのストーリーやTikTokの短尺動画、Xの投稿を通じて友人やフォロワーに影響を与え、さらなる購買行動を促進します(参照*1)。

Z世代はミレニアル世代よりも「つながり&共感」「承認&優越」の欲望が高いことがデータから確認されています(参照*5)。体験を共有し、共感を得ること自体がイベント参加の満足度を高める構造になっていると読み取れます。

主催者にとっては、来場者が「撮りたくなる」「投稿したくなる」仕掛けをどこまで設計に組み込むかが、イベント後の二次拡散を左右します。拡散が次の来場者の参加動機になるという循環をどう生み出すかが、集客の持続性を決める要素です。


主催者が迷う設計判断


体験型演出とコスト配分の悩み

Z世代の参加動機やSNSとの連動を踏まえると、体験型の演出に力を入れたいと考える主催者は多いはずです。しかし現場では、演出にどこまで予算を割くべきかという課題が常にあります。

テーマ性を持った演出は、没入感と話題性を同時に生み出す可能性があります。例えば「縁切り」をテーマにしたイベント事例では、日本の神社に伝わる「お焚き上げ」の風習を現代的にアレンジし、過去のつながりに区切りをつけて新たな出会いへ踏み出せるよう後押しする体験設計が行われました(参照*12)。

ただし、Z世代のコスパ・タイパ志向を考えると、演出に費用をかけすぎてチケット価格が上がれば参加ハードルを高めてしまいます。推し活の主流が「月3,000円未満」である実態を踏まえると、体験の質を高めつつ参加費用を抑える工夫をどう両立させるかが、多くの現場で試行錯誤されているテーマです。


フォトスポットか中身か

もう一つ、主催者が現場で迷いがちなのが、フォトスポットの設置にどれだけ投資するかという判断です。写真を撮りたくなるフォトスポットや立体装飾を設けることで、来場者が自然に投稿したくなる環境を作り、SNSでの拡散は広告費をかけずにイベントの熱量を広げる有効な手段になるとされています(参照*13)。

一方で、Z世代は「興奮&享楽」「つながり&共感」の欲望がミレニアル世代よりも高いことが確認されています(参照*5)。見た目の映えだけに偏ると、肝心の体験の中身が薄くなり、「行ったけど楽しくなかった」という印象を残しかねません。

フォトスポットを入口にして拡散を狙うのか、コンテンツの充実で参加者の満足度を最大化するのか。どちらか一方に振り切るのではなく、限られた予算の中でどこに重心を置くかを、ターゲットの参加動機に照らし合わせて判断することが求められます。


おわりに

Z世代のイベント参加実態を見ると、参加率56.8%というリアルイベントへの根強い関心がある一方で、参加動機はコスパ志向・非日常体験への渇望・推し活・限定性と多層的です。さらに、コストやタイパ、心理的安全性といったハードルが参加判断に大きく影響しています。

主催者としては、どの参加動機にどの程度応えるかを選び取ることが設計の出発点になります。データから見えるZ世代の姿を手がかりに、自社のイベントに合った判断軸を組み立ててください。


参照

(*1) CANVAS(キャンバス) – Z世代マーケティングとは?消費者動向と価値観・成功事例を解説

(*2) 株式会社サイバーエージェント – サイバーエージェント次世代生活研究所が「2025年Z世代のSNS利用率」を発表!

(*3) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 【Z世代100名に調査】「大学生は遊ぶ場所に何を求める?」アートアクアリウム美術館 GINZAが実態調査を発表

(*4) Z世代の春のお出かけ事情調査!タイパvsコスパ 重視するのはどっち?行き先を選ぶリアルな基準や“行く価値がある”と感じる条件が判明

(*5) MarkeZine – Z世代とミレニアル世代はリアルイベントに何を期待する?調査結果から見えた「イベント体験価値」の世代差 (1/3):MarkeZine(マーケジン)

(*6) マイナビキャリアリサーチLab | 働くの明日を考える – 2026年卒大学生インターンシップ・就職活動準備実態調査(中間総括)

(*7) syncAD(シンクアド) – 消費しない「推し活」が新常識?!Z世代350人調査で見えたリアルな消費行動

(*8) イマーシブ(immersive)とは?意味や事例からZ世代の価値観をわかりやすく解説 |ニュースタンダードキーワード!!

(*9) Cheering AD – 【2026年最新版】全国2万人に聞いた「推し活」の実態!

(*10) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – Z世代からシニアまで、熱を帯びる新たな遠征スタイルとは|「推し活×遠征」に関する実態調査結果全データ公開

(*11) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – Z世代の3人に1人が職場の飲み会に不参加。参加条件は「会社負担」「2時間以内」などコスパ・タイパ重視か。「飲み会」に関する意識調査を実施

(*12) プレスリリース・ニュースリリース配信シェアNo.1|PR TIMES – 「縁切り」をテーマに新たな出会いを応援するTinder®のポップアップイベント「てぃん社」 9月12日(金)からZeroBase渋谷にて開催

(*13) Retail Voice(リテールボイス) – マーケッターに「!」を​ – イベントを成功に導く会場装飾の基本と外注ポイント&最新トレンド