ライブイベント収益化の方法とは?チケット販売から投げ銭まで徹底解説
はじめに
ライブイベントは、チケット販売の収益化だけで成り立つ時代ではなくなりました。配信チケット、物販、投げ銭、NFTなど手段が広がり続ける一方で、どの方法を組み合わせれば自分のイベントに合うのか、多くの主催者が迷っています。
この記事では、主要な収益モデルの仕組みと現場の事例を整理しながら、それぞれの収益のポイントを紹介します。
ライブイベント収益化の全体像と主な収益モデル
収益化を構成する5つの柱
ライブイベントの収益化は、大きく分けて5つの柱で成り立っています。チケット販売、物販、配信課金、投げ銭などのファン課金、そしてスポンサーシップです。これらを単独で運用するケースもあれば、組み合わせて全体の売上を底上げすることもあります(参照*1)。
実際に、チケット・配信・物販などエンタテインメントに関わるあらゆるビジネスを実現する統合型プラットフォームでは、企画・制作・運営支援・収益化を網羅的に提供する形態が生まれています(参照*2)。また、高品質なライブ配信やチャンネル月額課金での動画配信のほか、オンラインサロン、EC物販など、エンターテインメント産業のデジタルシフトを推進し、新たな収益機会の創出を支援するサービスも登場しています(参照*3)。
自分のライブイベントでどの柱に重点を置くかを決めるときは、まず会場の有無、配信環境の整備状況、ファンとの接点の深さを洗い出すところから始めてみてください。
リアル会場とオンライン配信の収益構造の違い
リアル会場では、チケット、スポンサー、グッズといった対面を軸とした収益モデルが中心です。日本のスポーツ産業はまさにこの構造が主流であり、新型コロナウイルス感染症のまん延により大きな打撃を受けました。一方で、欧米のスポーツ産業ではWeb3.0技術等をはじめ、データやデジタル技術を活用した新たなサービスで収益拡大につなげている事例が見られます(参照*4)。
オンライン配信では、会場のキャパシティに縛られない点が大きな違いです。配信チケットの販売に加え、投げ銭やメンバーシップ課金など、リアル会場にはない課金ポイントを設けやすい構造になっています。
どちらか一方に絞るのではなく、リアルとオンラインで異なる収益ポイントを把握し、それぞれの強みを掛け合わせる設計を検討することが必要です。
チケット販売による収益化の方法と工夫
会場チケットと配信チケットの価格設計
ライブイベントの収益化で最初に検討すべきは、会場チケットと配信チケットそれぞれの価格帯をどう設計するかという点です。実際の事例を見ると、両者の間には明確な価格差が設けられるケースが目立ちます。
音楽ユニットMonsterZ MATEの現地ライブでは、一般チケット(1Fスタンディング・2F指定席)が9,800円、特典付き現地チケットが15,800円に設定されていました。一方、同じイベントの配信チケットおよびアーカイブチケットはそれぞれ8,800円でした(参照*5)。
現地チケットには「空間体験」の対価が含まれるため高めに、配信チケットは間口を広げるために手に取りやすい価格にするという傾向があります。自身が開催するイベントの規模やファン層と照らし合わせながらチェックしてみてください。
特典付きチケットやプレミアムチケットの活用
同じライブイベントでも、チケットにグッズや映像作品を組み合わせることで客単価を引き上げる工夫が広がっています。
バーチャルアーティストとリアルアーティストが共演したライブ「バズリズム LIVE V 2023」では、スタンダードチケットが8,800円、プレミアムチケットが19,800円でした。プレミアムチケットにはTシャツとBlu-rayディスクが付属しています。さらに推し活応援チケットも同額の19,800円で、個別グッズセット・推し動画・Blu-rayディスクの特典が付いていました(参照*2)。
特典内容ごとの価格差や同梱アイテムの種類を一覧にして比較し、自分のイベントで原価とのバランスが取れる組み合わせを洗い出すことで、特典を有効に活用しましょう。
アーカイブ配信・ライブビューイングによる販売機会の拡大
ライブイベントの収益化は、当日だけでなく、アーカイブ配信やライブビューイングを組み合わせることで、イベント終了後にも販売機会を設けることができます。
ABEMA PPV ONLINE LIVEでは、チケット購入者が公演終了後も約9日間にわたって見逃し配信で本編を視聴できました(参照*6)。またANISAMA V神 2024では、アーカイブ配信チケットの販売に加え、ライブ映像を収録したBlu-rayの発売も決定し、期間限定の特別な特典付きチケットとして展開されていました(参照*7)。
当日参加できなかった層や、もう一度見たいというリピーター層に向けて、アーカイブの期間設定や特典の有無を具体的に詰めていく作業が、販売機会の幅を広げる鍵になります。
グッズ・物販とデジタル連動による売上拡大
イベント限定グッズとEC販売の組み合わせ
会場限定のグッズ販売は、ライブイベントの収益化を支える定番の手法です。限定性がファンの購買意欲を刺激する一方、会場に来られないファンへの販路をどう確保するかが現場の悩みどころになっています。
人気ゲーム「バニーガーデン」のライブイベントでは、劇場限定グッズとしてコラボドリンクやポップコーンを販売し、購入者にランダムで特製コースターを1枚プレゼントするキャンペーンも実施していました(参照*8)。別のライブでは、人気イラストレーター描き下ろしのキービジュアルやドット絵を取り入れたレトロゲーム風デザインなど、細部にまでこだわったアイテム展開が行われていました(参照*5)。
会場限定グッズの企画段階で、EC販売向けに別バージョンや受注生産品を同時に準備できるかどうかを検討しておくと、売り逃しを減らしやすくなります。
NFCタグやデジタル体験を付加した次世代グッズ
物販の収益化に新しい切り口を加えているのが、近距離無線通信(NFC)タグを活用した次世代グッズです。スマートフォンをかざすだけで限定コンテンツにアクセスできるため、物理的なグッズにデジタル体験を重ねることができます。
NFCタグを活用したタッチラベルグッズは、スマートフォンと連携した新しいグッズ体験を提供することで、ファンの購買意欲を刺激し、イベントの収益向上に貢献することが期待されています。具体的には、光るグッズがSNS投稿の増加を通じた拡散効果を生み、さらにNFCタグで限定デジタル特典を付加価値として提供できます。加えて、ペンライトからタッチラベルグッズに切り替えることで、40%以上のコスト削減が可能とされています(参照*9)。
グッズの企画時に、デジタル特典の内容とNFCタグの単価を並べて採算を試算し、従来のペンライトとのコスト比較を行う作業が判断材料になります。
投げ銭・スーパーチャットとメンバーシップ運営
ライブ配信における投げ銭の仕組みと収益規模
ライブ配信の投げ銭とは、視聴者がリアルタイムで配信者にお金を送る仕組みです。YouTubeのスーパーチャットが代表的で、配信中に視聴者が好きな金額を支払い、メッセージを目立たせることができます。リアルタイムかつ双方向であることを生かした収益化の手段として機能しています。
人気が高いVTuberの場合は月に数百万以上の収入を得ることもあります(参照*10)。また、配信者とファンの間に生まれる物語を支え、配信者の「ファン獲得」「収益化」「撮れ高向上」の3つの軸で支援する仕組みも登場しており、YouTubeやTwitchなど多様なプラットフォームでの配信をより収益化できる世界を追求する動きが続いています(参照*11)。
投げ銭の収益は配信者の知名度やファンとの関係性に大きく左右されるため、自分のファン層の規模と熱量を踏まえたうえで、投げ銭をメインにするか補助的に使うかの位置づけを決めることが大切です。
メンバーシップ・サブスクリプションで安定収益をつくる方法
投げ銭がスポット的な収益だとすれば、メンバーシップは毎月の安定した収入を目指す仕組みです。視聴者が定期的に料金を支払い、メンバー限定の特典やコンテンツにアクセスできる形態を指します。
メンバーシップ運営では、コアなファンに向けたプレミアムな体験を提供することで、ファンの忠誠心を高めるとともに、活動を支える安定した収入源になっています(参照*10)。
メンバー向けに何を提供するか、更新頻度はどのくらいに設定するか、価格帯は複数段階にするかといった項目を事前にリストアップし、継続的に運営できる範囲で設計することが安定収益の土台になります。
NFT・Web3技術を活用した新しい収益源
チケットNFTとデジタル半券による副次的収益
ブロックチェーン上で発行される唯一無二のデジタルデータ(NFT)をチケットに組み合わせることで、従来にはなかった副次的な収益源が生まれています。紙の半券をデジタルに置き換え、コレクション価値を付加する発想です。
クリエイターの支援を行うZAIKO株式会社は、チケットNFTサービス「Digitama Stubs」を提供しています。イベント主催者が500円、1,000円、2,000円からチケット半券NFTの価格を選択でき、イベントのキービジュアル、日程、会場名、シリアルナンバーが付いたデジタル半券を従来の電子チケットと合わせて販売できます。これによりチケット販売収益に加えて副次的に収益をあげることが可能になります。さらに、このデジタル半券を売買できるマーケットプレイスも用意されており、ファン同士の売買を通じて主催者にも継続的な収益をもたらす構造です(参照*12)。
導入を検討するときは、デジタル半券の価格帯をどこに設定するか、マーケットプレイスでの二次流通による手数料がどの程度見込めるかを試算する作業が出発点になります。
来場証明NFTと推し活3.0によるファンエンゲージメント
NFTの活用は収益化だけでなく、ファンとの関係性を深める手段としても使われ始めています。来場証明NFTとは、イベントに参加した事実をブロックチェーン上に記録するデジタル証明書です。
playground株式会社による実証事業では、証明書を取得し始めたファンが全14種類に対し、平均で11.1枚の証明書を取得したことが報告されています。この結果から、本事業がファンとの共創関係構築に寄与することが実証されました。オタク市場は6,840億円とされ、次の消費市場の中心となるZ世代の約6割が推し活に関心を持っていることから、スポーツ・エンタメ業界にとっては大きな成長機会が訪れているといえます(参照*4)。
来場証明NFTを導入する場合は、証明書の種類数やコレクション要素の設計をファン行動に合わせて調整し、取得率と再来場率を追跡できる仕組みを事前に設けておくことが運用の軸になります。
収益化手法の比較と自分に合った選び方
ここまで紹介してきたチケット販売、物販、投げ銭、メンバーシップ、NFTなどの手法は、それぞれ強みが異なります。会場チケットは一度に大きな売上を立てやすい反面、キャパシティの制約があります。投げ銭やメンバーシップは少額の積み重ねですが、ファンとの関係が深まるほど安定感が増す構造です。NFT関連はまだ新しい仕組みのため、ファン層がデジタル慣れしているかどうかも判断材料になります。
ボイスやグッズの販売もまた、キャラクターの声を吹き込んだ商品や独自のイラストを生かしたグッズなど、ファンの心をつかむことがブランド価値を高め、大きな収入源となります(参照*10)。
そして、配信者は今やファンを惹きつけ、コミュニティや経済を動かす存在となっています。YouTubeやTikTokではライブ配信機能の利用が大きく拡大し、Twitchでは最も成長したカテゴリがVTuberであったことが分かっています(参照*11)。
収益化の方法に迷ったときは、自分のイベント規模、ファン層のデジタルリテラシー、運営に割けるリソースの3点を軸にして、手法ごとの初期コストと運用負荷を比較する作業から始めてみてください。
おわりに
ライブイベントの収益化は、チケット販売を起点にしながらも、配信、物販、投げ銭、メンバーシップ、NFTと選択肢が広がり続けています。すべてを一度に導入するのではなく、自分のイベントの規模やファン層に合わせて優先順位をつけることが、持続的な収益につながります。
まずは現在の自身のイベントの収益構造を分析し、どの部分が弱いかを確認するところから始めてみてください。
